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  • 2012.03.17 Saturday
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迷子の大人たち

 熟年の白馬の騎士が未亡人に恋して



 しっかり笑えて泣ける、今どき貴重な作品だ。
ニューヨークに住むパール(シャーリー・マクレーン)は、ぱっとしない結婚生活だったとはいえ、37年連れ添った夫に先立たれたばかり。
ところが葬式の日、イタリア男のジョー(マルチェロ・マストロヤンニ)にデートを申し込まれる。
23年前に窓の外から見かけて以来、パールのことがずっと好きだったという。
 けんもほろろに断られても決してめげないジョーの姿に、かたくななパールの心は次第にほぐれ、ぎくしゃくしていた家族も絆を取り戻していく。
 もっとも、感情を殺して生きてきたパールは、恋愛なんて大の苦手。
母親としても理想的とは言いがたい。
長女のビビ(キャシー・ペイツ)は、デブだとか出戻りだとか、いつも辛辣な口調でパールにののしられている。
 次女のノーマ(マーシャ・ゲイ・ハーデン)は赤ん坊を亡くして以来、空想の世界にこもりきり。
昨日はマリリン・モンロー、今日は『卒業』のミセス・ロビンソンと、映画の登場人物になりきる。
 この作品は典型的なラブコメディーの形式をとりながら、家族や友人との関わりも浮き彫りにする。
 ジェシカ・タンディやシルビア・シドニーらのベテラン女優から見事な演技を引き出したのは、イギリス出身の女性監督ビーバン・キドロン。
ファンタジーと現実をほどよくミックスし、感傷に流されずに心の機微を描き出している。
 レイチェル・ポートマンの夢見心地の音楽からスチュアート・ワーセルの目をみはるセットまで、すべてがちょっとオフビートな波長とぴったり合っている。
 だが何といっても見事なのは主役の2人。
現実にはいそうもない「白馬の騎士」をこうも自然にこなせる役者はマストロヤンニ以外いないだろう。
怒りを秘めた役をやらせたら当代一のマクレーンも、出色の演技を披露。
とぴきり素敵なのに意地悪でうたぐり深いパールがようやく心を開くとき、その笑顔はまぶしいほど輝いている。
 映画が終わるころ、観客はパールを、そして世界を、恋するジョーの目を通して見つめているはずだ。

【1993.3.11】
監督/ビーバン・キドロン
主演/シャーリー・マクレーン
   マルチエロ・マストロヤンニ




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